メイキング動画

撮影の裏側を一部まとめた動画です。

撮影環境

住んでいた家の4畳の部屋の一部を撮影に使用しました。造形やセット制作、パソコンでの編集作業も同じ場所で行いました。セットの保管場所もないので、なるべくコンパクトに作ってその部屋の隅に積んだり、押し入れに入れたりしました。実質的に使えた範囲は2畳程度だったと思います。広い環境を求めれば少しは出来たかもしれないけれども、コンセプトが狭い中で広く撮影するだったのでそのままやりました。

その部屋に90cm四方のセットを組みました。撮影台は太さ3cmの木の棒を組んで制作。セットを載せる台のベースは厚さ1.5cmのスタイロフォーム2枚重ねでした。コルク板などが主流ですが、問題の有無で言うとなかったです。
床からセットの地面までの高さは大体25cm。台が低いのは三脚の足を広げて立てたり、足付きの照明を立てたりする床面積がないためです。そのために、座布団を敷いた上で正座か立て膝でコマ撮りをしていました。そもそも自分が撮影台の前に座ると体を動かせる範囲はほぼ無いので、後ろに下がることも出来ません。そして、木造建築だったので少しでも体重移動させるとカメラは微振動でずれてしまいます。だから一度座ると必要分の終了まで基本的には座りっぱなしでした。
(写真は全部終わって片付けた後)
撮影で使ったセットなどは最終的に畳一畳分の中に積み上がる程度の量で収まりました。

基本的に主な撮影はどのシーンもこの撮影台の上で撮っています。

シーンが変わる毎にセットを壊しては作り替えの繰り返し。

不足している外側は合成していますが、合成の素材もセットがあります。CGは使っておらず細かな物も基本はコマ撮り。

スタイロフォームは穴だらけになりましたけれども、13年間で使えなくなることはなく、取り換える必要がなかったです。

カメラが大きく移動するカットなどでは少しセットを延長させています。ただし、すぐに「見切れて」しまうため、草や木々を配置してセットの切れ目がわからないようにします。

CGのように後からアングルは変えられないので、特に周辺を合成する場合は、先に素材の重ね方や映り方を考えておきます。狭い環境で撮影する場合は、完成のイメージを如何に持っておくかが大切だと思います。
これはDINOと滝の部分をこの後に撮った素材の中に組み込んでいく形を取ったカットですが、なるべく合成はしたくなかったので、極端な引きの絵以外は基本的に一部の合成に留めています。
映り方によって人形のサイズを変えたりしていないので、引きの絵にするためにはなるべく必要な距離まで画面を引きました。
しかし部屋の限界があるので多少はAEでサイズを変更しています。

撮影機材

カメラは一眼レフではなくコンパクトカメラ(CANON PowerShot G5、G11)。基本的に撮る時は絞り16でシャッタースピードは1秒以上でした。
撮影当初はカメラ移動撮影用にOptioも使っていました。シャッターはレリーズを使ってます。コンパクトカメラを使ったのはセットが小さいからので一眼レフだと突っ込めないという理由と、とにかく焦点距離が短いので前後にピントが合うパンフォーカスが出来るためです。一眼レフの場合、後ろがボケていい感じになると言うよりも、セットや人形のサイズ感がすぐにバレてしまいます。また、接写が利くのも理由で、とにかく様々な理由からコンパクトカメラを使用しました。その代わりに明暗の階調は犠牲にしていて、明暗の極端な部分は潰れてしまっています。 *コンパクトカメラなのでズーム機能がついていますが、ズームは一度も使っていません。常に16mm(コンパクトカメラでの)で撮ってます。
厄介なのはカメラの都合上、3分に1回ライブビューが落ちてしまうことで、それまでにどうにかするという撮影でした。

撮影のアシストにはDragon frameではなく、2005年に購入したランチボックスを使用しました。(そもそも制作開始時はDragon stopmotionでしたし、まだ珍しかった)

ランチボックスを使用していたため、確認はブラウン管14インチテレビ。本番のデータはSDカードで記録したものをUSBケーブルでMacに転送させていました。コンパクトカメラを使うためにDragon frameは対応外というのもランチボックスを使用した理由です。ただし暗部はほとんど見えないので、かなりの部分は勘で撮影しています。そしてテレビを動かせないので、かなりプレビューには制約がありました。今は断然Dragon frameがお勧めです。
撮影準備当時はまだ「地デジ」前。でもハイビジョンサイズで撮っていてよかったです。危うくSDサイズになるところでした。

カメラ移動、カメラ固定
カメラを乗せるのはベルボンかSLIKの3段式三脚、または全高18cm程度のミニ三脚の3つを主に使用。床のワックス塗装が剥げてしまうため、三脚を床にテープで止めたりするような、テープ類の使用はNG。三脚の足も縮めていたのでウェイト(ショットバッグ)を挟めず、実質的に三脚は一切固定しないで撮ってました。本当は良くないです。
カメラ移動は微動雲台を初期は多く使用していましたし、プラレールも結構使っていましたが、中盤になると慣れもあって三脚をそのまま1コマ毎に動かしていました。モーションコントロールは当然無しです。カメラ移動は一見大変そうだけれども、動いている方がアニメーション自体のミスが目立たないので実は気が楽だったりします(個人的感想)。

冒頭の場面はプラレールでコースを作り、その周辺を造花で埋めてます。 あっという間に道の突端まで行ってしまうので、いい塩梅で草がカメラレンズ前を隠すようにしておき、撮影画面が画面が黒くなったら、次のコースと草の配置に直して続きを撮るようにして短いコースを長く見せています。映画「ロープ」でヒッチコックが1カットになるようにやって見せたことと同じです。

とにかく色々くっつけてます。

プラレールは大活躍です。

主観ショットでカメラが進みながら(プラレールを使用)、徐々に上にアングルが上がっていく場面のためにはLPLの引き伸ばし機も使用しています。それは学生時代に写真を焼いていた時に買ったものです。今は引き伸ばし機として購入するよりもコピースタンドとして購入する方が簡単だと思います。
「タンク」よりも大きいけれど、重いものを安定して固定しながら上下に動かすことが出来ます。金額的にも1,5万円くらいで買えるのでは?
*カメラレールやリグでもいいと思います。

遺跡の中にカメラが入っていくカットは、まずカメラが移動しながらぴったりと入り口に吸い込まれていかなければならないので、逆再生で撮影することに。さらに、雲台の上にカメラを据えて、それをコピースタンドに付けるとミニチュアに対して人の目線に近い高さにカメラを設置出来ないので、上下逆さまにしています。コンパクトカメラの特徴として1cmでもカメラピントが合ってくれるので、カメラを移動させながらピントを極力おくって、現実的な見た目にするようにしました。

照明は市販のクリップライト(白熱電球)を使用(最大4つ)。それを鴨居にくっつけたり、セットの四隅に立てた室内用物干しポールにくっつけたり。耐熱式のディフューザーもないので、基本的に直射ではなく天井や壁にバウンスさせていました。(余談ですがクーラーがなかったので、夏はただでさえ暑い部屋に白熱電球も加わり40度近くなりました。一方、冬場は10度以下になるところが電球効果で14、5度くらいになってました。)
ただしLEDパネルライトが安くなったので、今ならばそちらも検討を。
丁寧にやるならば部屋は反射が起こらないように白くない方が良いのですが、普通の部屋なので。

セットの崖や岩は発泡スチロールが基本です。無垢の塊ではなく、板状のものを買ってきてそれを切ってスチノリで貼り合わせたり、爪楊枝や釘を刺してつなぎ合わせました。その上に新聞紙を適当に貼ってから「フワッと軽い粘土」を盛り付け、さらにモデリングペーストを塗り、アクリルガッシュで色を塗って完成です。植物は(今では似たものが100円ショップで買えますが)東急ハンズで購入しています。セットの固定はスタイロフォーム製の土台に爪楊枝や釘で刺してました。「汚し」のような塗り方(ドライブラシ)はやっているけれど、それ以上の変わった事はしていません。

ツタ状の偽植物や、造花の葉などを色々と使用。
木はスチロールに粘土を貼り付けて筋状の彫り込みを入れたもの。

細かい植物表現は鉄道模型などのジオラマパウダーを使って。
リアル目にはしたかったけれども、あくまでもジオラマっぽいミニチュア感のあるセットにしたいと思って制作しています。

動かすことや撮影することに興味の比重が高く、人形も造形も何か専門的に学んだことはないので、本当に造作は「なんとなくの独学」がスタートラインです。プラモデルや鉄道ジオラマなどを作ったりすることも小学生以降はやってこなかったし、自分の土台は本当に美大受験のためにやったデッサンや色彩や立体造形が大元になっていると思います。それに加えて必要に応じて考えた形です。ぱっと見は大した造形ではないものをどのように画面を通してそれっぽく見せるかが楽しいところ。

水について
水の表現は2002年に制作した「雨童子」で雨を試し、2004年の「鬼」でそれを発展させたので、さらにその延長線で考えました。本物の流水はコマ撮りをすると水面の煌めきが非常に強く表現出来るので、水の動きが早い小川のような表現は可能です。でも滞留するような様や、大きな川の流れを表現するのは困難だと思ったので、水は基本的に全て偽物で作ることにしました。
(写真は雨童子/2002より)

そこで最も使用したのはラップです。(100円ショップのものが一番良い)
川の流れはビニールシートのデスクマットの上に整髪料を塗り、それを巻き取ったもの。滝は綿で出来ています。少年とワニが水面に立っている場面は、キャラクターの足が通る部分に穴を開けたアクリル板の上にジェルを塗ったものを使用しています。飛沫表現として「ゴキパオ」(泡式のゴキブリ捕獲スプレー)も使っていますが、もう販売されていません。「ゴキパオ」はアクリル樹脂が泡状に噴射されるので、それをラップに塗布すると良い感じに波飛沫が作れたのですが。後半のウォータースライダーみたいな場面で多用してます。

基本的には綿とラップを使用しつつ、飛沫にはスノースプレーを綿にくっつけたりしています。

完全に綿で作った滝

少しづつ回転させながらコマ撮り。

ただのラップですが、カメラアングル次第で水に見えます。

滞留する水は整髪料を使用して、少しづつハケで撫でて動かす。

後半、ウォータースライダーのような場面の水はラップ。
側壁はくしゃくしゃにしたアルミホイルに絵の具を塗ったものをつないでいます。しっかりした固定は出来ないので動くけれども、カメラが移動するので気づかれません。ラップが流れていくセットの幅はおおよそ20cm程度。冒頭と同じ方法でプラレールを使用して撮影しています。

これは「コマ撮り」なので、偽物を使ってそれらしく見えるように考えるか、本物の素材を活かすかを考えて使うものを選ぶと良いと思いました。自分の場合は、とにかく特殊なものや高価なものは使わないことを絶対条件にしていたので、伸縮性の低いラップが水の表現に適していると感じました。

編集のためのパソコンはPower Mac G4から始まり、iMac(Mid2011)、iMac( 2015)と移行。G4ではデータが重くてプレビューが見られなかったけれども2011年までは使用していました。ADOBEはCS3、CS5のPhotoshopとAfter Effectsを使用しました。この作品は合成を行わないと完成しませんでしたが、ブルーバックは使いませんでした。ブルーバックを使うには、色の反射を避けるためになるべくブルーバックと被写体を離す必要があります。しかし距離が取れないことと、合成のためのエフェクトなどの精度が当時は高くなかったからです。そこでマスクを利用した合成と手作業の合成でやっています。(片付けの時に撮った写真)

あくまでも「これで出来ます。これで良いです。」と言いたいのではありませんが、画面作りは良い機材を揃えるだけでは出来なくて、創意工夫も必要なのではないかなとは思います。