日本のコマ撮りアニメーション 令和(2020年代編 後半)
日本のコマ撮りアニメーション 令和(2020年代編 後半)
2026年
Netflixシリーズ「My Melody & Kuromi」の展覧会、「Miniature Wonderland ミニチュア♡ワンダーランド」が2025年12月から開催。そのマイメロの監督である見里朝希さんの新作「キャンディーカリエス」が4月から配信・放送。
ミニチュア造形で知られるMOZUさんがシンエイ動画と組んで「ポップパップポルターズ」を制作。「SEGA Cooro × dwarf studios Powered by コマドリ倶楽部」によるぬいぐるみを用いたアニメーションがネット配信。様々なアニメーターによる表現がなされています。
そしてWEB CMの「講談社ブランデッドフィルム | LIGHT HOLE」が派手でした。手掛けたのは『Lunch Box Studios』。2018年の「Honda “ORIGAMI”」と同じ手法ですが、かなり高度になっていると感じました。
東京藝術大学公開講座 OPEN TRADITION 2026「川本喜八郎 生誕101周年 知られざる長編作品との邂逅」(1月12日)では長編「蓮如とその母」の上映と、伊藤有壱さん、アニメーターの峰岸裕和さん、心理学者の横田正夫さんによるトークも展開。川本さん関係でいうと、2月にテレビ東京「新美の巨人たち」で特集が組まれ、長野県飯田市川本喜八郎人形美術館の紹介のほか、峰岸裕和さんによる川本作品の撮影再現がありました。
展覧会としては「ニャッキ!」30周年記念 ネオクラフトアニメーション 伊藤有壱展」が横浜で4月に開催。「コマ撮りってなに?展~ストップモーション・アニメーションの秘密~」がSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ映像ミュージアムで5月から9月末まで開催。
<AIとコマ撮りアニメーション>
閑話休題ですが、3月、SNS上に投稿されたアニメーションにつけられたAIクレイアニメというワードが話題になりました。そこでは粘土を使っていないのだからクレイではないという意見や、そもそもAIは認めないという意見、アニメーションとして面白いという意見など様々な意見が見受けられました。
クレイアニメーションも仕事で制作している個人としては、今更実際のクレイではない"クレイアニメ”が出てきても驚きはありません。何かから学習をしている"AI”に抵抗のある人が非常に多くいることは承知の上で、AIを用いて画面破綻のない1本の作品が作れる時代になっていることに率直に感心しました。
ただクレイアニメーションの良さとは何か?を改めて考えさせられます。なぜならクレイアニメーションへの愛情を感じる意見としてあった「本来は手間がかかる」「手作りで作られる」などはパペットでもカットアウトでも手描きでも同じだからです。クレイは自由に変形出来るメタモルフォーゼなどに向いていますが、普通にパペットの表面をクレイで作り、セットの中で動かす作品も昔から多々あります。だからクレイの良さ、クレイでなければならない理由は何なのか。クレイアニメーションを作る側はもう少し考えてもいいのかなと思いました。多分答えはないのですが。
一つだけ悔しいと思ったのは、アニメーション関係者の方の中に「もうクレイアニメーションはほぼ作られていない」「全てクレイで作ることはない」という認識の方がいたこと。実際は2026年現在きちんとまだ仕事として成立しており、発注もあります。まだ消えてはいません。
また「Hondaパワープロダクツ事業プロモーション映像」が実際のミニチュアを生成AIで動かす手法で制作されました。これについては特設サイトに記された『コマ撮りをベースに生成AIを活用した手法を採用。』という文言が個人的には引っかかってしまうところです。
広義的に言えば、手描きアニメーションも絵を1枚ずつ撮影して動かしているのでコマ撮りですが、それは分類分けされて、現在コマ撮りと言えば人形や粘土など、物体を直接動かす手法を指します。だから見た目はどうであれ、そうではない主法でコマ撮りのように見せているのはあくまでもコマ撮り風の作品です。
HONDAのコマーシャルのミニチュア制作は手間暇がかかり、簡単な仕事ではなかったと思います。撮影も時間が掛かったと思います。スタッフの方々は精一杯の努力をされたと思うので、そのせっかくの新しい挑戦がわずかな文言で気になるものに変わってしまうのは非常にもったいないことだと感じてしまいます。『生成AIとミニチュアを融合させた新たなアニメーション表現に挑んだ』というような事で良かったのはないかと思います。
新しい技術には問題がつきものだと思いますし、開発の速度に法整備が間に合わないことも出てきます。だからこそAI動画を発表する際には、新しい挑戦である意思を示してほしいと考えています。そうしてAIを活用したオリジナリティ溢れる動画という一つの分野が生まれていけば、それは悪いことではないと思うのです。
AIは新しい分野なのに、なぜ既存の表現と同じであることを売りにしてしまうのでしょう。
大抵の新しい技術は、これまでと同じことが効率的に出来るという売りから始まることも多いので、AIは革新性から商業化の過渡期において起こる、既存の技術や見た目の再現をアピールしている段階かもしれません。
でもその結果、全く別の技術であるにも関わらず、予算や納期面で既存の技術と比較する話が多いので悪目立ちをしています。
またAIが使われる中では、それを使ったことをぼかしたり、隠して使い、後から見つかって叩かれるということが多々起きています。せっかくの新しい技術なのに好まれる使われ方がされていません。
(ただ前述のAIクレイアニメはAIと言っているのに批判があったので、本当にAIにアレルギーを持つ人は多いです)
過去、「CGを使えば、安くクレイよりも自由度が高いクレイアニメが作れる」というような文句でたくさんクレイアニメーション風CGが台頭しましたが、そのブームはいつの間にか去りました。今AI動画を見ながらそれを思い出します。AIが広くクリエイティブ面でも親しまれるのは、今のこの状況を越えた先にあるのだろうと思います。
コマ撮りは誕生した頃から非効率で費用対効果が見合わないと言われ、何度も新技術を前に絶滅の危機がありました。でも色々な工夫と努力と愛してくれる人たちの支えで今に至っています。だからこれから「動画はAIでいいよ」みたいな事を言われる時代が来たとしても残っていくと思いますし、手描きもCGも同様に独自の進歩で発展していくだろうと思います。